前回は、貧血の症状をお話ししました。
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体が辛いと心のことを考える余裕がなく、つまり悩みが無くなり、二次障害の鬱とか不安感とかが消えてしまいました。
また、貧血になって体の自由が効かなくなったことで、自分の行動を改めて考える良い機会になりました。
対人スキルが消えてしまった
貧血のせいで、「気持ちよく人と関わるために積み重ねてきた対人スキル」が消えてしまいました。
そのスキルとは、
- 「私は敵ではありませんよ」の笑顔
- 「ちゃんと話を聞いていますよ」の頷き、相槌
- 「別に気にしてませんよ」の笑顔、とぼけ顔
です。
派手ではないけど大事な、白いごはん的なやつ。
顔が冷たくしびれているので笑顔を作れなくなりました。正座した時の足のしびれが顔に来た感じです。
クラクラめまいがするので、「うん、うん」と相槌を打つことができなくなりました。私は喋るのが遅く話題も提供できないので聞き役になる方向で自分を伸ばしてきたのですが、それが使えなくなりました。
左:貧血時 右:正常時(猫かぶり時)
口がしびれ、声帯も上手く働かないので、声が出せません。頑張れば出せますが、頑張ってるだけあっておかしな声が出ます。泣くのを堪えているような、怒りを抑えているような、いかにも機嫌の悪そうな声になります。
笑えないことが問題ではない
顔が冷たくしびれているのでいるので、表情が出ませんでした。
でも、楽しい時に笑えない、というのは別に問題ではありません。
表情をアウトプットできなくても、私の脳みそが「面白いよー!楽しいよー!」と快楽を感じているなら、それでOKだと思います。
問題は「面白いのに笑えない」ことではなく、「笑うべき状況で笑えない」ことです。つまり上記の対人スキルが使えないことです。気持ちよく仕事をするための、お互いの笑顔。それを作れないことが問題でした。
隠すこともできない
表情を作れないということは、人間誰しも当たり前に持っているマイナスの感情も隠しきれていないのではないかと考えました。
例えば、つまらない話に付き合わされた時、スーツの肩にフケを見つけた時、嫌な仕事を頼まれた時。いつもなら笑顔やポーカーフェイスで隠せてたはずの本心が、隠しきれていないのではないかと不安になりました。
逆に脳に余裕ができた
本来、脳の血行が悪くなるとパフォーマンスは下がるはずです。
しかし、私の場合は上がりました。
体が生命維持に必要でない機能(表情のアウトプット)を切り捨てたことにより、どうせ表情を作れないからと私も対人モードをやめたからです。そうしたら、具合悪いはずなのに逆に余裕ができました。それほど対人モードはメモリを食ってたんですね。
「笑顔で感じよく見せる」ことに使っていた労力を、相手の話の内容を考えることのほうに回せました。ワーキングメモリを一つのことに使えたからパフォーマンスが上がったのでしょうか。
数学のテストを解いている時の、気持ちの良い集中力。大好きな感覚でした。
大人になってからは、趣味の編み物や折り紙でしかこの集中力を感じることができませんでした。仕事では普通のふりをすることに気を取られ、集中なんかできませんでした。
でも、この貧血の時は仕事中でも少し集中できました。
これは私にとってはすごい発見でした。
なんだ、大人になって退化したわけではなかったんだ。
私もそこまでバカになったわけじゃなかったんだ。
不安感が一時的に無くなり、自分に自信を持てました。
落ち着いて人の話を聞いたり仕事をすることができました。
体が悪い時の方が、心が悪い時よりも気が楽でした。
と書くとそれは違うよと仰る方がおられるかもしれませんが、あくまでもこの時の私はそうだったという話です。
そこの職場の人たちは理系なのでコミュニケーション能力をそれほど重視していませんでした。私が貧血で顔が動かないことにも気付きやしません。ちょっと感じ悪くても深入りしてきません。
もしも以前いた営業課で貧血になっていたら、おやじギャグに反応できずネチネチ絡まれ、女子のキャピキャピに乗れず孤立し、居づらくなって辞めていたと思います。
ありがたいタイミング。運命の思し召しみたいなものを感じます。
私は社会に合わせるために自分を変えすぎていました。
そのせいで、元々ある能力が発揮できていませんでした。
「対人スキル」と「仕事の能力」どちらを取るべきか。
当時の私のメモには、
「気持ちよく仕事するために積み重ねてきたスキル」が一旦消えた。消えたら楽だった。頭も良くなった。でもそろそろ元に戻らないといけない。
とありました。
対人スキルの方を取ったようです。
現在失業中の私からすると、「どっちもだよ、どっちも。バランス良くやるんだよ。どちらかというとやっぱり仕事できたほうが社会貢献できるんじゃない?」と思うのですが、渦中の私からするとコミュニケーションが第一だったようです。
で、それはたぶん正しい。
引きこもりの私が何と言おうが、社会に参加していた当時の私が言うんだから間違いありません。
まあ、能力が発揮できていなくてもクビにならない程度には仕事ができていた、というのもありますが。
というかコミュニケーションも仕事もどっちも全力だったんですよね、結果が伴わないだけで。
私は貧血を治し、元通り対人スキルを使いました。
(とはいっても普通の人には遠く及びませんので誤解なきよう!)
以前よりは落ち着いて仕事ができるようになりました。気付きのおかげです。
でも調子に乗っちゃって今度は自律神経を壊すことになるんですけどね・・・
対人スキルは身についてだんだん自然になり、それにつれて持っている能力を少しずつ出せるようになり、そうやってらせん状に上がっていけると思うんですよね。