先日受けたWAIS-Ⅲの検査結果が出ました。
結果の見方を忘れないためのメモと、私の検査結果、結果の生かし方を書いていきます。みなさまの参考になれば幸いです。
※検査結果の見方についてはすでに色々なサイトで語られており、すべて私オリジナルの文章で表現するのは難しく、他サイトから引用した部分もありますので、出典を明記させていただいています。
WAISについて詳しい方は後半から読んでね。
全検査IQ、言語性IQ、動作性IQ
全検査IQ
全検査IQとは、一般的に言う知能指数「IQ」のこと。「言語性IQ」と「動作性IQ」の合成結果。
言語性IQ
言葉を扱う能力のこと。
言葉の知識・言葉を使って考える能力・言葉で表現する能力・耳で聞いた情報を処理する能力を示すIQ。
生育環境や学習環境の影響を受けやすいと言われています。
動作性IQ
感覚や運動など、動作にまつわる能力のこと。
目で見た情報をすぐに理解・記憶・処理する能力、目と手の処理能力、非言語的サインの理解、空間的な動きを把握する能力を示すIQ。
後天的な影響を受けにくいと言われています。
群指数
群指数とは、全部で14種類のテストを受けた結果を4つの項目に分類したもの。
私は、心理士さんから説明された「耳か、目と手か」×「長期記憶か、短期記憶か」の分類だと捉えるのが分かりやすいです。
言語理解
「耳×長期記憶」
語彙や言葉で説明する力などを測る指標です。
また、「結晶性知能」と言われるこれまでの経験や学習が土台となる知能も測られます。*1
知覚統合(知覚推理)
「目と手×長期記憶」
知覚推理は、目で見た情報を踏まえて論理的に物事を考える力を測る指標です。
また、「流動性知能」と呼ばれる新しい情報への適応に必要な能力についても測ることができます。
やや抽象的な言い方をすれば「ひらめき」のような領域も含まれるでしょう。
作動記憶(ワーキングメモリー)
「耳×短期記憶」
耳から入った情報を短時間記憶にとどめたり、その情報を頭の中で整理しながら考える力を測る指標です。
処理速度
「目×短期記憶」
単純な作業を素早く正確に行う力を測る指標です。
下位検査
群指数の基となる14種類のテスト。
- 単語・・・単語の意味を答える
- 類似・・・二種類の単語の類似点を答える
- 知識・・・一般知識の問題に答える
- 理解・・・日常生活のルールや常識に関する問題に答える
- 算数・・・小学校で習う範囲の算数の問題に暗算で答える
- 数唱・・・耳で聞いた数字をルールに従って復唱する
- 語音整列・・・耳で聞いた数字や五十音をルールに従って復唱する
- 絵画配列・・・イラストが描かれたカードをストーリー順に並びかえる
- 絵画完成・・・一部が欠けたイラストを見て、足りない部分を指摘する
- 積木模様・・・積木を並べて見本と同じ模様を作る
- 行列推理・・・一部が空欄の図に当てはまるパーツを探して当てはめる
- 符号・・・簡単な符号を見本通りに書き写す
- 記号探し・・・見本の記号を複数の記号の中から見つける
- 組合せ・・・パズルを組み合わせて見本と同じ形を作る*2
私の検査結果
結果的には、自閉スペクトラム症と診断されました。グラフで表すとこうなります。
<得意なところ>
・部分と部分をまとめ上げて全体として完成させること
・言葉の意味や社会的ルールについての知識の豊富さ
<苦手なところ>
・目で見た情報の大事なところに素早く反応すること
・耳で聞いた記号的な情報を記憶して、並べ替えるなど複雑な操作を頭の中ですること
全般的には平均より上という結果です。「言語性」と「動作性」にも差はありません。
ただ、群指数で見ると「作動記憶(ワーキングメモリー)」だけが他より低い結果となっており、得意なところと苦手なところとに差があることが分かります。
「作動記憶(ワーキングメモリー)」のテストの中で、「算数」の暗算は比較的できていました。耳で聞いた数字を巻き戻して映像化することでなんとか計算できました。
しかし、「語音整列」はほとんどできずお手上げでした。記憶の糸が切れてしまい、たぐりよせられません。
数字やひらがなを意味のない「記号」として扱うととたんに記憶ができなくなるのだなと思いました。心当たりがあります。
学生時代は、社会で出てくるWHOなどのアルファベットを覚えられず、略す前の英語の意味を調べることでやっと記憶することができました。
数学の公式をそのまま覚えることができず、一度証明しないと納得して覚えることができませんでした。そして、全部証明するほどの熱意もなかったので、高校ではどんどん落ちこぼれていきました。
トランプの神経衰弱が苦手で、頑張って覚えても次の瞬間には消えてしまいます。
群指数の中で、目で見た情報を論理的に処理する「知覚統合」は一番得点がが高かったです。しかし、その中の「絵画完成」が7で「積木」が18と、差が11もあります。
これは、視力で言うと、右が0.1で左が2.0みたいな状態で、平均1.0だからといって良く見えているとはいえないのです。
「積木」がほぼ満点だったので、心理士さんに「どういう風に見えているんですか?」と聞かれたのですが、上手く答えられませんでした。ピコンとひらめくだけです。
このピコンに頼って私は幼少期から生きてきた気がするのですが、成長するにつれ、人間関係や複雑な問題などピコンと答えが出てこない問題が多くなり、周りの人と比べたところ私はピコンに頼って何も考えていないのではないかと感じ、自分の異質さを自覚するきっかけとなりました。
「知覚統合」の中で苦手だった「絵画完成」は、絵を見ておかしなところを探す問題です。目で見た情報から素早く大事なところにフォーカスする能力がないということです。
私が車を運転するのに恐怖を感じるのはたぶんこの能力が低いせいですね。目の情報量が多く視点があちこちに飛び、大事なところも不要なところも均等に見てしまい、情報を取捨選択できません。
同じく苦手だった「配列」は、4コマ漫画を順番通りに並べ直す問題です。「絵画完成」も「配列」も、全体を見たり空気を読んだりする力を表します。
この部分の能力の低さを、私は得意分野であるパターン的思考と知識の豊富さ、処理速度で補ってきたのだと思います。普通の人からすると考えなくてもピコンと分かることを、私は考えてパターンに当てはめるという余計な作業をしないと分からないし、考えても分からなかったり外れることのほうが多いです。
面白かったのは、頑張ればできる問題(暗算など)は平均点以上だったものの非常に苦しかったのに対し、点数が平均以下だった問題は頑張りようがなくそれほど苦しさを感じなかったことです。半端に能力があるほうが苦しいんですね。
結果は絶対ではないとも思いました。
私は語彙には自信があるのですが、言葉で説明するのが下手です。テスト中、何度も「もっと詳しく説明してみて」「それってどういうことですか?」と聞かれました。ワーキングメモリが低いので頭の中で文章を組み立てて推敲して口に出すという作業が苦手なんです。調子が良ければ言語理解はもう少し得点が高かったかもしれません。
また、時間が関係あるのなら言ってもらえると思っていたので、特に急いで答えることをしませんでした。粘ったほうがいいのか、粘らないほうがいいのかも分からず中途半端に悩みました。年をとって記憶力や計算力が衰えてきている自覚もありました。それも加味されての能力でしょうが、頑張ればもっと高い点数が出ただろうなと思います。
検査結果を生活に生かす
検査結果から、仕事や対人コミュニケーションのヒントを心理士さんにまとめていただきました。
まずは、「人の話を聞き取りにくかったり、言われたことを覚えていなかったり勘違いしてしまったりする」ことについて相談した結果。
①耳から聞いた情報の処理が苦手なので、耳からの情報量が多い場合にもれてしまったり覚えきれていない可能性がある。
→その通り。いっぱいいっぱいになってしまいます。
②言葉によらない情報を処理するとき、パターン性のあるものについてはかなり上手く処理できるが、複雑な情報をそのまま一から自分で処理することは苦手。つまり、相手の話す内容があまり整理されておらず、自分で整理しながら話を聞かなくてはいけない場合、勘違いや聞きもらしが出やすくなってしまう可能性がある。
→マニュアルでは理解できるのに、人に説明してもらうと理解しにくくなるので、相手の話し方のせいにしてしまい、トラブルになることがありました。
③パターン的な処理が非常に得意な分、少ない情報で自分なりの解釈をしてしまい(これは間違いではないが)、結果的に相手から求められていたものと自分の理解に齟齬が生じている可能性がある。
→得意さが裏目に出るという視点がなかったので、教えてもらえてよかったです。足りなさばかり気にしていたので盲点でした。
小説を読む時に頭の中で映像化しないと読めないのですが、すべて文章で説明されているわけではないので私が勝手に付け足した部分もあるんですね。それと同じことが現実世界でも起こっているということですね。
聴覚情報処理障害(APD)への言及を少し期待しましたが、出てきませんでした。
また、対処法もアドバイスいただきました。
①耳からの情報量が多い場合は、処理速度の速さを生かしてこまめにメモをとる。最後まで一度に聞くと情報量が多くなるので、手順ごとに話を一度止めて区切らせてもらう。
→メモはとってましたが、話を区切るのは思いつきませんでした。
②完成形のつかみにくい話や順序立っていない話の場合には理解しにくくなるので、あらかじめ見本を見せてもらったり、手順書があればそれを先に見せてもらうと、理解力が発揮しやすい。
→空気が読めないのでなかなかお願いしにくいですが・・・「マニュアル読んでも分からないでしょ」と先回りして気を遣って口で説明してくださる先輩も多いです・・・みんなそんなにマニュアル苦手なのかな?
③パターン的な処理の得意さが裏目に出て、少ない情報から早とちりが生じてしまうことについては、話を聞き終えたところなど節目節目で「・・・ということでよろしいでしょうか?」など、自分なりの理解を復唱するとよい。
→これはやるようにしてます。言われてからさらに気を付けてやるようにして、結果もついてきている気がします。
以上、私の検査結果とまとめでした。
テストを受けてみてよかったです。
自分だけでなく他人にも凸凹があるんだな、それが個性なんだな、みんな違ってみんないいんだな、という考え方に近づけた気がします。
私にとって他人は摩訶不思議で理解できない存在なのですが、項目ごとに数値化することで、理解するためのとっかかりができた気がします。
また、私はIQが高い自覚があったのですが、周りの人からは知的障害者的に扱われたりバカにされることも多く、自分と他人の評価が合わず、自分が何者なのか分からず苦しかったです。自称IQが高い人は滑稽だと、自分を否定することしかできませんでした。ちゃんとテストして結果が分かって良かったです。
私には一部分突出した能力があり、みんなに見えない景色が見えている。それは確かなので否定する必要はない。でも、ほとんどの人に見えている景色が、私には見えていない。それがトラブルの原因になっている。これは助けてもらわないといけないし、得意なところは発揮してみんなの役に立つべきだよなあと。
他に分かったこと。
得意すぎが裏目に出てトラブルを生むこと。半端にできる人は頑張ればできるけどすごく苦しいこと。できない人が努力せずにすぐ諦めるのはなぜだろうと謎だったけど、身をもって経験して理解できたこと。
まだ受けていない方、おもしろいのでおすすめですよ。
WAISについて参考にしたサイト、出典
https://www.kaien-lab.com/faq/2-faq-diagnosis/wais-iv/