あすかの人生劇場(ASD漫画ブログ)

アスペルガーのマンガ&エッセイです

受動型アスペが工場で働いてみた


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アスペは工場勤務に向いているのではないかと思い、近くの工場で派遣で働いてみました。

結果的に、やっぱ向いてる、と思いました。詳細をご報告します。

 

働く前に決めておいたこと

今回のテーマは「過剰適応しない」でした。

今までは事務職だったのですが、笑顔を作ったり、言いたいことを抑え込んだり、分かった振りして必死で調べたり、不安でも平気そうな顔をするなど、普通の人の振りをすることにエネルギーを使いすぎて、肝心な仕事に力を注げませんでした。おまけに体調も崩しました。社会に適応するという点では正解の行動ではあったのですが。

私は仕事に集中してみたかった。黙々と作業してみたかった。過集中を仕事に生かしてみたかった。全力で仕事してみたかった!

だから、人間関係が濃厚な事務職ではなく、工場で働いてみることにしました。

本来の私で真摯に仕事に取り組んで、それでダメならクビにしてもらって構わない。というスタンスで挑みました。天職ならもうけもの。

夫からは「誰とも話さなくていい。工場にはそういうコミュ障や障害者がけっこういる。そういう人として働いてみろ」と言われました。夫は工場経験者です。

会話したら絶対ボロが出るし、最初から「コミュ障な人」として一人でいれば楽だろうと思いました。しかし、孤立すると風当たりが強くなるのは想像に難くありません。もし辛かったら辞めよう、と決めてました。

  • 人間関係が悪くなったらすぐ辞める
  • 重い物を持つならすぐ辞める(腰痛持ち)
  • 腱鞘炎や立ち仕事が辛い場合は、慣れるかもしれないからすぐには辞めない
  • 何かあったら抱え込まず夫に報告

これを事前に決めて仕事に臨みました。

「すぐ辞める」と心に決めておいたので楽でした。会社に迷惑をかけることにはなりますが、急に来なくなる人なんてたくさんいます。いい子ちゃんでいようとするからメンタル病むんです。

最終的にパートの人数が増えたので、派遣の大部分が切られることになりました。自分から辞める前にクビになりました。ちょっとひどい切り方でしたが、パートさんよりだいぶ時給が上でしたし、仕方ないです。良い経験になりました。お世話になった方に「ここで働けて楽しかったです」と伝えて辞めることができました。

 

工場の仕事内容

工場では、言われたことを言われた通りにやってれば良いらしいです。安全上の観点から、よけいに手を出したりアレンジすると事故やケガの危険があります。

アスペ的には楽ですよね。

ちょっとした手助けなど、時と場合によっては言われなくても手を出した方が良いんですが、気配りが足りない時はちゃんと指摘してもらえたので良かったです。私は言われなければ分からないけど、言われればできるので。

私が働いたのは、とあるプラスチック製品を作る工場です。

最初にいくつかの持ち場を経験し、そのうち適性がありそうな場所に配属される感じです。固定されず飛び回る人もいます。

私はラインの中でも丁寧さが必要とされる持ち場に配属されました。私は細かい作業が得意だし、どこまでも丁寧にやるので、上の人の判断はさすがだなあと思いました。終わった時すごく上手だと誉められ、いい気になって帰宅。

実は、子供の頃から自分がテキパキ作業するタイプではないことを自覚しており、工場のラインについていけるのか不安でした。

www.asujinge.com


でも、なんとかついていけました。いつも同じ速さではなく、周りに合わせて急ぐ時もあればゆっくりな時もあり、突然のトラブルがあってもなんとか収められる時間設定になっていました。単純作業の繰り返しなので考える必要がなく、速く作業することに没頭できました。

指先ほどの小さな部品を組み立てたり、胸に抱えるほどの大きな部品を組み立てたり、ひたすら段ボールを作ったり、部品を袋に詰めたり、個人で黙々とノルマを達成する仕事だったり、さまざまな種類の仕事がありました。重要な仕事はベテランのパートさんの仕事なので、私たち派遣がやるのは単純作業だけ。

この工場は近所の主婦が働くことを想定されているため、基本的に女性が持てない重さの部品を扱うことはありませんでした。

たまに部品がいっぱい入ったコンテナを持ち上げたり、カゴ車を移動させる作業がありましたが、重いので苦手でした。

コンテナ
カゴ車

体力に関しては、立ちっぱなしのところもあれば動きっぱなしのところもあり。座り仕事はなかったです。私は動きっぱなしの部署だったため、腰が強くなり、腹筋が締まり、背中の肉が薄くなり、体脂肪率が落ち、2kg痩せました。辞めた今少し体重が戻ってきていますが。

発達障害者にとって心配なのは、体の故障です。
人の気持ちが分からない人は自分の体の悲鳴を聞くのも苦手なので、腱鞘炎になる可能性があります。また、注意力のない人は、事故やケガが心配です。一応工場は事故やヒヤリハットが発生する度に安全対策されているはずですが。

私も自分の手の悲鳴に気付けず腱鞘炎になってしまいました。腱鞘炎というのは、簡単に言うと、手の動かしすぎで痛くなっちゃう怪我のこと。
過去にもなったことがあるのですごく気を付けていたし、これ以上手を傷めないようやり方を工夫していたつもりでしたが。

工場に腱鞘炎はつきものです。一日中体の同じ部分を動かし続けるんですから当たり前です。体が慣れたり筋肉がついてくれば痛みが消えることもあるので、そこまで頑張るつもりでしたが。

腱鞘炎にならない人や、多少腱鞘炎でも何十年も働き続けられる人もいるので、何かコツがあるんでしょうけど、私にそのセンスはあるのだろうか・・・

話は変わりますが、大事なことを。
これを読んでる人はアスペさんだろうから教えておきます。自分で気付けないと思うので。知ってたらすみません。
工場はできる人ほどきつい仕事に回されます。どんくさい人は簡単な仕事に回されます。それでも時給は同じです。できないフリをしろというんじゃありません。我々の演技力ではバレます。そうじゃなくて、ストイックで頑張りすぎる癖がある人は気を付けてね、酷使されて壊れたらポイっと捨てられるだけなので。

人間関係

笑顔を作らない!
普通の人のふりをしない!
過剰適応しない!

と心に決めていたのですが・・・

同じ年ごろの女性たちと同日に雇われました。まあ、当たり前にグループ化しますよね。ごはん一緒に食べますよね。連絡先交換しますよね。断る方が難しいですよね。

夫からは「あーあ、やっちゃったね」と言われました。孤高のコミュ障にはもうなれません。

それでも、余計な笑顔を作ったり機嫌をとったり同調しすぎたり共感を示しすぎたりしないように気をつけました。今回のテーマですから。

結果的に、無理して適応しなくてもあまり支障がなかったです。仕事中はほぼ話さないし、みんな家事や子育てで忙しい中働いてるので、他人にそんなに興味ないし、トラブルを避けて事なかれ主義です。私も年をとって暴言もないし(と思ってるだけかもしれないけど)。多少空気読めてないのはバレてたっぽいです。裏で何を言われてるか分かりませんが、みんな大人なので顔や口に出さないでいてくれました。同期の一人が性格が悪く悪口が多かったので心配でしたが、一応表面上は普通に接してくれていたので私自身は傷つかずに済みました。


たまに同期と同じ持ち場に配属された時、同期の仕事ぶりを観察してました。コミュ力あってすぐに先輩の懐に入ってました。私が言葉通り受け取って全く理解できなかったことを、同期がたぶん言外の意味も理解して率先してやってくれました。私には魔法に見えました。ちょっと落ち込んで帰宅。夫に報告。これはしょうがないことだし、比べてもしょうがないし、土日で気持ちを切り換えることに成功しました。



私が働いた工場は、基本は直雇用のパートで回し、繁忙期だけ派遣を雇うタイプでした。(ほとんど派遣だけで回してるタイプもあります。自動車工場など)

派遣の地位が低く、顔も名前も覚えてもらえないので同期の人たちは怒ってましたが、私は心地よかったです。喋らずに済むしコミュニケーションを頑張らなくていいので。

働く上で、同期と仲良くする事のメリットは大きいです。自分一人では得られない情報が、同期からホイホイ得られます。あの人が怖いらしいとか、あの部署がキツイらしいとか情報共有してくれます。私は周りのことに気付けない(周りに興味がないのとは違う!)ので本当に助かりました。

分からないことも聞けます。私は人に頼るのが苦手なのですが、なるべく同期の人に弱いところを見せて「〇〇ができない~どうしよう~」と泣き言を言うように努めました。そしたらみんながアドバイスをくれます。

もちろん、人間関係に失敗したらすぐ辞めてやる、という覚悟はしてました。人間関係と初めての職種のストレスはダブルでは抱えきれないだろうと夫と相談して決めました。死の危険もある職場だし、考えこんで周りが見えなくなったら危ない。


本当は、コミュニケーションは最低限挨拶と返事だけで良いと思っています。特に工場はコミュニケーションの重要さの割合が低いと思ってたし、実際そうでした。やることやってればいい、が成立しやすいです。

ただ、怖そうだなと思ってた先輩が、話してみたら優しくて、余計な緊張が消えるということもあります。コミュニケーションは大事だなと気付かされます。

仲良くするのとは違うんです。最低限、挨拶と返事だけは誠実にやってれば。

怒られやすくするためでもあります。

怒る方も、知ってる人と知らない人とでは怒り方を変えざるを得ません。知ってる間柄では軽く冗談めかして注意できることも、知らない人やむすっとした人相手には警戒して厳しめに注意するでしょう。
どうせ怒られるんだし、自分のために関係を築いておくんです。私だって人から見たら無口で怖そうな人かもしれないし。誤解を解くためにも誠実に挨拶を。


この工場にはたくさんのお局さんがいました。お局といってもバリバリのキャリアウーマンではありません。家庭や趣味を優先するために、責任のないパートでそこそこ稼ぐことを選んだ人たちです。責任を持ちたくないからといって仕事ができないわけではなく、普通に有能な人たちです。こういう世界があるんだな、と知見が広がりました。

コミュニケーション能力を重視するお局さんからの私の評価は低いです。それでちょっとその人が怖くなりましたが、仕事ぶりで高く評価してくれる人もいますし、能力関係なく普通に一員として接してくれる人がほとんどです。一人の態度だけ気にするのは馬鹿馬鹿しいなと思いました。

男性で一人知的障害っぽい社員がいました。みんなに愛称で呼ばれ、優しくされ、愛されていました。本人も生き生きと仕事されてました。障害者に優しい、良い職場だなと最初は思ったのですが、彼は取締役の親族らしく、そりゃみんな優しくするはずだわと。

数を数えるのが苦手らしいのでできる仕事は限られるのですが、作業はめちゃ速かったです。いつも優しく声をかけてくれました。彼と仕事できることは私の密かな癒しでした。

もう一人、パート女性で発達か知的っぽい方がいましたが、愛されるタイプで仲良くやってました。人よりちょっとだけ覚えが悪そうでしたが、素直に質問して、最終的にはマスターして普通に仕事できてました。

女性ばかりが50~60人いる職場で生き残っているのは、やっぱり定型の中でもコミュ力が高く精神強めの女性がほとんどでした。私みたいなタイプはここでは長く働けないだろうなと思いました。孤高のコミュ障ポジションも、この職場では無理でしょうね。

ただ、工場によってカラーがだいぶ違うっぽいので、私に合う工場もきっとあるだろうなと思いました。工場を渡り歩いてきた同期の人も、もっとドライなところもあれば、グループ同士仲が悪いところもあり、ここみたいにみんな仲良く(表面上だけでも)できてるところは珍しい、と言ってました。

夫が言っていた「工場にはコミュ障や発達・知的障害者がけっこういる」も間違いではありません。夫が一時期働いていた自動車工場には、一目でそう見える方がけっこう働いていたそうです。もし仕事についていけなければ、隣の「障害者ばかりの工場」に回されるらしい。障害者雇用かどうかは分かりませんが、受け皿があっていいなあと思いました。

(こういうとこでガチの人を見すぎたために、夫は私を発達障害とは認めてくれないふしがあります…)

アスペに工場勤務は合うのか?

合うと思います。
人間関係の希薄さとモクモク作業できるところが向いています。

夫は単純作業を繰り返してると「俺何やってんだろ」となって苦痛になるらしいんですが、私はそんな作業が好きだし楽しいし癒しです。普通の人にとってきついことが、アスペにとって楽しいことだったりします。

工場は基本的に単純作業なので覚えてしまえば楽です。何度かやればスピードやコツがつかめます。

人間関係はどの職場でも必ずありますが、工場は比較的薄いと思います。うちの工場は女性たくさんの中に男性数人が働いていましたが、男性はおばちゃんと絡む必要がないのでほぼ喋らず楽そうでした。

正直、工場はもっと殺伐としてると思ってました。荒くれ者がいるかもしれないと。でも想像してたより全然普通。普通のおばさんが普通に働いてました。なんだ、飛び込んでみるものだなあ。


初日、部品をカパッとはめるだけの単純作業をして帰った夜。
夫から「どうだった?まず朝から何やったか教えて?一日中研修だったの?」と話しかけられた時気付きました。ああ、今、質問攻撃で脳がいっぱいいっぱいだなあ。この感覚懐かしいなあ、というかこっちがいつもの私だよなあ。あれ、ということは、夫が帰って来るまでは頭がスッキリ晴れやかだったんだ!単純作業のおかげだ!

仕事後の脳のスッキリ感、事務の時には感じたことはありませんでした。事務は教わったことが全てではなく、その裏に察しなきゃいけないことがたくさんありました。いつも消化不良、いつも不安。家にいても不安。こんな私には単純作業が向いているとは思っていたけど、こんなに脳の負担が少ないとは!びっくりです。

そもそも、私は事務職の集中できなさ(電話や雑談で作業を邪魔される)にストレスを感じて、家で編物や折紙をしてあり余る集中力を発散させていたのでした。事務の仕事だってどうせ派遣。同じ派遣なら編物みたいな単純作業を仕事にすればいいじゃない、と思ったんです。思った通り、工場の作業は脳がスッキリするものでした。

天職だったらいいな、と思いましたが、ここは残念ながら雰囲気が合わなかったのと、手を傷めたのでしばらくはデスクワークしかできないと思います。

私は細かい作業が好きなのですが、工場の仕事は入ってみないと内容が分からないのが難点ですね。何の製品を作ってるかでだいたい想像するしかありません。また機会があれば自分に合う工場を見つけたいです。